墓じまいは、役所に申請書を一枚出せば終わる手続ではありません。とはいえ、必ず長期間かかるわけでもありません。実際に時間がかかりやすいのは、書類そのものよりも、親族、お寺や墓地管理者、石材店、新しい納骨先の予定や考えをそろえる部分です。
「何月までに終わらせたい」と考えている場合も、最初から工事日だけを決めるのではなく、準備、改葬先の選定、申請、実施の四つに分けて予定を立てると、無理なく進めやすくなります。
墓じまいにかかる期間の目安
墓じまいに、法律上「○か月以内」といった一律の標準期間があるわけではありません。
実務上は、改葬先がすでに決まっていて、親族や墓地管理者との話し合いも済んでいる場合には、1〜3か月程度で進められることもあります。
一方、これから親族へ説明し、新しい納骨先を探し、石材店の見積りを取り、お寺や墓地管理者と日程を調整するところから始めるのであれば、3〜6か月程度、場合によってはそれ以上を見ておくと安心です。
ただし、これはあくまで予定を立てるための目安です。
お墓が遠方にある、親族が多い、寺院との相談が必要、新しい納骨先がなかなか決まらない、といった事情があれば、もう少し時間が必要になることもあります。
反対に、関係者の話し合いが済んでいて、改葬先も決まっていれば、比較的スムーズに進むこともあります。
時間がかかりやすいのは「手続」より「調整」
墓じまいというと、役所で行う改葬許可申請が一番大変そうに感じるかもしれません。
もちろん書類の準備は必要ですが、実際には、その前後の「人との調整」に時間がかかることが少なくありません。
例えば、親族の中に「できれば今のお墓を残したい」という方がいる場合、話し合いを十分にしないまま進めてしまうと、後から大きな行き違いになることがあります。
寺院墓地の場合も、墓地の返還、閉眼供養、墓石の撤去などについて、事前に相談しておいた方がよいでしょう。
石材店についても、見積りを依頼した翌日に工事ができるとは限りません。現地確認が必要なこともありますし、お盆やお彼岸の前後などは予定が混み合うこともあります。
墓じまいでは、「役所の手続に何日かかるか」だけでなく、「関係する人や業者の予定をどうそろえるか」まで含めて考えることが大切です。
先に時間をかけたいのは、親族への説明と改葬先選び
墓じまいを急いで進めて、後から後悔しやすいのが、親族への説明と新しい納骨先選びです。
新しい納骨先には、一般墓、納骨堂、樹木葬、永代供養墓など、いろいろな選択肢があります。
費用や自宅からの近さだけでなく、
- 将来は誰が管理するのか
- 年間管理料は必要か
- 承継する人がいなくなった場合はどうなるか
- いつまで個別に納骨されるのか
- 将来、合祀されるのか
- 納骨した後に遺骨を取り出せるのか
といった点も確認しておきたいところです。
特に合祀型の永代供養墓などでは、納骨後に他の方のご遺骨と一緒に埋蔵され、その後は個別に取り出せなくなることがあります。
一度納骨すると元に戻せない場合もありますので、「安いから」「近いから」だけで決めず、契約内容まで確認しておきましょう。
予定は四つの期間に分けると考えやすい
墓じまい全体を一つの大きな予定として考えると、「何から始めればいいのだろう」となりがちです。
次の四つに分けると、現在どこまで進んでいるのかが分かりやすくなります。
1.準備期間
まずは、親族への相談、現在のお墓の場所や墓地使用契約の確認、墓地管理者への連絡などを行います。
寺院墓地の場合は、いきなり「墓じまいします」と伝えるよりも、「今後のお墓や供養について相談したい」と早めに話を始める方が、話を進めやすいことがあります。
古い契約書や墓地使用許可証などが残っていれば、この段階で確認しておきましょう。
2.選定期間
次に、新しい納骨先を探します。
気になる施設があれば見学し、費用だけでなく、供養方法や管理方法、将来の扱いについて確認します。
同時に、現在のお墓を撤去する石材店へ、現地確認や見積りを依頼します。
墓地によっては指定石材店があり、自由に業者を選べない場合もありますので、先に墓地管理者へ確認しておくと二度手間を防げます。
3.申請期間
現在のお墓からご遺骨を別の墓地や納骨堂などへ移す場合には、原則として改葬許可が必要です。
申請先は、現在ご遺骨が埋蔵・収蔵されている墓地の所在地を管轄する市区町村です。
一般的には、墓地管理者による埋蔵・収蔵の証明や、新しい納骨先が分かる書類などを準備して、改葬許可を申請します。
ただし、必要書類や申請書の様式、提出方法は自治体によって異なります。
郵送で申請できる自治体もありますが、その場合は往復の日数も予定に入れておきましょう。書類に不足があれば、追加提出や修正が必要になることもあります。
4.実施期間
改葬許可が整い、関係先との日程も決まったら、実際の墓じまいを進めます。
閉眼供養を行う場合はその日程を調整し、ご遺骨の取り出し、墓石や基礎部分の撤去、墓所の返還、新しい納骨先への納骨へと進みます。
これらをすべて同じ日に行うとは限りません。
現在のお墓と新しい納骨先が離れている場合などは、何日かに分けて行うこともあります。
お盆・お彼岸・年末年始の直前は、特に余裕を持つ
お盆やお彼岸の前後は、お寺や石材店の予定が混みやすくなります。
ご家族が集まりやすい時期なので、親族で話し合うにはよいタイミングですが、「みんなが集まるから、その日に墓じまいまで済ませよう」と考えても、石材店やお寺の予定が合わないことがあります。
また、墓石の撤去は屋外工事です。
台風、大雨、積雪などの天候によって日程が変わることもあります。遠方のお墓であれば、現地へ行ける日も限られます。
予定は少し余裕を持って組んでおく方が安心です。
「この日までに終えたい」事情がある場合
墓地の契約更新、転居、新しい納骨先の受入期限など、「できればこの日までに終えたい」という事情があることもあります。
その場合は、墓じまいを始めるときに、あらかじめその期限を関係先へ伝えておきましょう。
特に、
「墓地管理者との相談に時間がかかるのか」
「石材店の工事待ちが長いのか」
「新しい納骨先の契約に時間が必要なのか」
「改葬許可申請にどのくらいの日数を見ておけばよいのか」
というように、どこで時間がかかりそうなのかを早めに確認すると、予定を組みやすくなります。
最初に決める期限は、小さくて大丈夫です
墓じまいを考え始めたからといって、いきなり「○月までに全部終わらせる」と決める必要はありません。
むしろ、
「今月中に親族へ相談する」
「来月までに改葬先を二つに絞る」
「今週中に墓地管理者へ連絡する」
「石材店から見積りを取る」
というように、小さな区切りを一つずつ決めた方が進めやすくなります。
墓じまいは、早さを競う手続ではありません。
特に、合祀や墓所の返還など、後から元に戻せないことほど、少し時間をかけて考えることが大切です。
まとめ
墓じまいにかかる時間は、書類の枚数よりも、親族、お寺や墓地管理者、石材店、新しい納骨先との調整によって大きく変わります。
順調に進めば1〜3か月程度で終わることもありますが、これから親族への相談や改葬先選びを始めるのであれば、3〜6か月程度、場合によってはそれ以上を見ておくと安心です。
最初から「いつ全部終わるか」だけを見るのではなく、「準備」「選定」「申請」「実施」の四つに分けて、一つずつ進めていきましょう。
焦らず順番を守ることが、結果としていちばんの近道です。
参考情報
厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」
(2026年8月10日確認)
※改葬許可申請の必要書類、様式、提出方法は自治体によって異なります。また、墓地・寺院・納骨施設ごとに手続や契約条件が定められている場合があります。実際に進める際は、関係する市区町村、墓地管理者、納骨先へ個別に確認してください。
